さて、単純に日本語の作業だけを説明してもいいのですが、なにしろ筆者自身の理解不足もあり、もしかしたら、あなたの環境では同じ手順でうまくいかないこともあるかもしれません。 万が一本記事と同じやり方でうまくいかなかったとしても、なるべく自己解決できる手助けになればと思い、Linuxを使う上でのWindowsユーザがつまづきがちなところについて解説しておきます。 最近のLinuxのディストリビューションはどれもかなりイージーに使えるようにはなっていますが、Windowsユーザがまず最初にとまどうのは、ユーザ権限ではないでしょうか。 【ユーザ権限とは】 Windowsは基本的に一つのOSを一人の人が使うことを想定したOSなので、ユーザ権限という考え方が希薄でした。 Windowsの歴史の中でユーザ権限という考えが本格的に導入されたのはWindowsNTからで、Windows3.1、9X系統の、いわゆる16ビットウィンドウズではユーザ権限という考え方がほとんどありませんでした(言い換えれば、誰でも特権ユーザ)。 ゆえにWindowsユーザはユーザ権限という考え方になじみが薄く、ユーザ権限の考え方が導入されたWindowsNT以降の32ビットウィンドウズでも、特別何も指定しなければ特権ユーザ(Administrator等の管理者アカウント)でセットアップされますし、そのまま使っていても特別不都合がないようにできています。 極端な話、Administrator以外のアカウントに管理者権限を与えて、Administratorの代わりに使うこともできます。 ところがLinuxはそうではありません。rootアカウントは、システム絶対無二のアカウントで、明確に他のアカウントと区別されています。Linuxはもともとサーバ向けOS。当初からマルチユーザ(一つのOSに同時に複数の人がログオンする)を想定したOSなので、管理者と利用者の区別がはっきりしています。 Linuxのrootアカウントはユーザアカウントというよりも、「管理者権限」という抽象的なものに仮につけられた名前といったほうがむしろしっくりします。実装のされ方が他のユーザとは別物です。(だからこそ、rootのことをスーパーユーザ(ユーザを超越したユーザ)という表現をするのでしょう) これが何を意味するかというと、ユーザアカウントにしか影響しない操作は、rootで行っても意味がない(もしくはできない)ということです。 なので、Linuxを使う上ではユーザ権限を常に意識しておく必要があります。この辺をWindowsと混同していると、一見うまくいったように思えてもあとあとおかしなコトになるとも限りませんので注意が必要です。 ということで、Linuxの流儀に合わせるということで、日本語化を行う前に、まずは一般使用者用のユーザアカウントを追加しておきます。(もちろん、インストール時にすでにアカウントを追加しているのならその必要はありません) 【ユーザの追加手順】 ① Administrator(root)でログイン ↓ ② コントロールセンター起動 ↓ ③ 「System Administration」→「User Manager」を選択 ※既にuser01というユーザが作成されていますが、特別ユーザを作成していないとこの画面には何も表示されませんので、「Add」ボタンを押してユーザを作成。 ↓ ④ 「System Administration」→「User Manager」を選択 好きなユーザ名を「User name」欄に入力して、「Next」。(ここではxanuser1というユーザを作っています。) ↓ その後、パスワードの設定、アクセスグループの設定等の画面が出ますが、デフォルトのままで先に進みます。 ↓ xanuser1が作成されました。 これで前準備は終わりました。 【suコマンドの使い方およびコンソールでの表示の違い】 ユーザ権限の問題に絡んで、suコマンドの使い方を知っておかなければなりません。 くどいようですが、Linuxはユーザ権限の考え方がはっきりしているので、「現在rootなのかそうでないか」が、OSを操作する上で非常に重要な要素になってきます。 例えば、先ほど作成したxanuser1アカウントでログオンし、コンソールから「apt-get update」というコマンドを打ったとします。 すると以下のようなエラーメッセージが表示されます。
このようなエラーが出るのは、xanuser1が/var/lib/apt/listというディレクトリをロックする権限を持っていないためです。 Windowsのセオリーでは、Administratorのような管理者アカウントでログオンしてやり直すのが常套手段ですが、Linuxの世界では必ずしもそれが正しい方法ではありません。 特に日本語化の作業などは、ユーザ毎に用意された設定ファイルを操作するので、rootで行ってしまうと、xanuser1に反映されません。 それではどうするのかというと、ここでsuコマンドが登場します。
そうすると、コマンドプロンプトの最後が「#」になります。 これが、「現在root権限を持っていますよ」という印です。(rootでログオンし直したわけではなく、root権限を持ったxanuser1になったという意味) こうして、再度apt-get updateを実行すると、ちゃんとコマンドが実行されます。 同様の問題は、コントロールセンターにもあります。 例えば、コントロールセンターからは現在動作しているサービスを見る画面があります。 この画面はxanuser1で見たときの画面です。 確かに現在動作しているサービスを見ることはできますが、そのサービスを止めたり開始したりという操作ができません。 また、赤枠で囲まれたところに、Changes in this module require Administrator access(このモジュールを変更するには、アドミニストレータアクセスが必要です)と説明書きがあります。わざわざWindowsユーザにも分かりやすいようにAdministratorという用語を使っているところなんか同情してしまいますが(^^;、要するに、suに相当する何かをしなければ見る以上の操作をすることはできないということです。 ここではsuコマンドを実行する必要はなくて、画面下のAdministratorというボタンを押し、rootのパスワードを入力すればOKです。 これで、手動でサービスを停止したり開始したりという操作ができるようになります。 このように、Linuxはユーザ権限を分かっていないと何かととまどってしまうので注意してください。 さて、今回、OSの日本語化を行うわけですから、日本語特有の問題やLinuxの入力システムについての知識などもある程度分かっていないと作業がやりにくいこともあると思いますが、それは随時説明するということで、次ページから実際の日本語化の作業に入りたいと思います。 |