Wiki(ウィキ)の利点/欠点について検証
〜Wikipedia、Livedoor Wikiの基幹技術〜

Volume078:2006年6月12日(月)
今回はフリーソフトの紹介というよりも、フリーシステム(?)のWiki(ウィキ)についてです。
Wikiは、いわゆるコラボレーションサイトを構築するためのCGIプログラムですが、Wikipedia(ウィキペディア:http://ja.wikipedia.org/wiki/)のおかげで、「Wikiは使い物になる」ことが圧倒的に証明されたかたちになりました。
筆者も、Wikipediaが注目されはじめたころからWikiには興味が湧き、実際に数ヶ月前にLivedoor Wikiを使ってみたり、はたまたサーバーにPukiWikiを設置してみたりといろいろ検証してみたのですが、残念ながら、結果としては「まだ時期尚早」という感じ。
とは言え、Wikiのシステムは非常に可能性を感じさせるシステムではあります。


【Wikiとは何か】

用語的な解説は、
http://e-words.jp/w/Wiki.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/Wiki
などを参考にして頂きたいのですが、筆者なりにWikiの利点/欠点についてまとめてみたいと思います。


【Wikiの利点1:多人数が共同で編集できる】

Webページは、作成者以外の人がコンテンツを変更することはできません。
ところが、Wikiは誰でもコンテンツを編集できます。いわゆる共同作業(コラボレーション)が出来るわけです。
まさにWikipediaはこの特徴を最大限に活用しているサイトです。現在、Wikipediaは日本語版だけでも20万語以上の語彙を収録しています。これだけのページを個人で作成するのは、どう考えても不可能ですよね。
Wikipediaは、それぞれの用語に対して知識を持つ者が思い思いにその用語の解説を追加/編集をすることによって成り立っているわけです。


【Wikiの利点2:コンテンツを整理するための機能に優れる】

Wikiは単にページを作成するだけでなく、作成したページをある一定の法則に従って自動的に整理することを念頭に置いたシステムです。
「一定の法則」というのは、一番単純なのは、ページのタイトルでソートして目次ページを自動生成するなどの機能です。
例えば、以下のような感じです。

※それ以外にも、タイトルとは別に集計キーワードを指定できるHiki(http://hikiwiki.org/ja/about.html)みたいなものもあります。

また、「コンテンツを整理する」機能とは若干意味合いが違いますが、コンテンツの内容を整合させるための仕組みもあります。
例えば、サイト内リンクの仕組み。
サイト内の「test」というページにリンクさせる時には以下のように、ページ名を[[ページ名]]という風に囲みます。


見た目はこのようになります。↓

「test」はサイト内に存在するページなので、ハイパーリンクが自動生成され、「test2」はサイト内にないので、"?"が付き、黄色いバックで表示されます。
ちなみに、「test2?」をクリックすると、test2の新規作成画面が表示されます。
このように、Wikiは一貫性というか、完全性というか、ライブラリ性というか、そういう性格を持ったコンテンツを作成する際には非常に有効なシステムだと思います。


もちろん、Wikiは万能ではありません。欠点もあります。


【Wikiの欠点1:Wiki文法を覚える必要あり】

Wikiのコンテンツは、HTMLではなく独特のWiki構文を使って作成します。
Wiki文法の詳しい説明は割愛しますが、例えば、文字の強調/斜体等の修飾は、以下のようになります。(PukiWikiの場合)


「ページ更新」を押すと、以下のように表示されます。

本来、これはWikiのメリットであります。HTMLのような難解な文法を覚える必要がないということです。
ですが、今どきHTMLを一からコーディングする人は滅多にいないでしょう。今ではワープロのようにWYSIWYGでWebページを作成できるのが当たり前の時代ですので、むしろWikiは不便と言わざるを得ないです。
Wikiは編集者側に特別なソフトウェアを必要としないという意味ではメリットですが、現実的なページの作成効率は、むしろWikiの方が悪いと思います。
そういう意味で、まさにWikipediaのような、コンテンツの作成する人が圧倒的にサイト作成者以外の人が多いサイトはこれで構わないと思うのですが、ある程度サイトの管理人が中心になってサイトの内容をコントロール/管理するような場合は、むしろ、その記事作成効率の悪さが裏目に出かねない気がします。
中には、かなりWYSIWYGで作成できる独自拡張したWikiもありますが、文法がWikiシステムごとにかなり違うことも手伝って、まだまだ改善の余地ありです。
Blog Writeやubicast Bloggerのような、投稿クライアントソフトがあれば一気に解決されるんですがね〜(サポートする機能が大きすぎるので無理な相談か?^^;)


【Wikiの欠点2:SEO的に不明な点が多い】

Wikiで作成されたページは、非常におおざっぱに言えば、HTMLファイルのような実体を持ちません。(静的HTMLを生成できる、MediaWikiのようなシステムもあるにはありますが)
そして、WikiのページのURLは、"http://・・・/wiki/index.php?test"のような、CGIプログラムに渡すパラメータ付きのURLになってしまいます。
これが、SEO的には非常に不利。
基本的に、このようなURLを持つページは、検索エンジンのクロール対象になりません。検索エンジン側から見たら、CGIプログラムにどんなパラメータを渡せばいいのか判断しようがないので当たり前と言えば当たり前ですよね。
ただし、絶対クロールされないかというとそうではなく、クロールしてくれるようにすることも可能ではありますが、その辺の事情については、http://www.timedesign.ws/blog/archives/2004/12/seo.html
を参照ください。
いずれにしても、動的ページが従来の静的ページより有利ということは原理的にあり得ませんので、この辺の「やってみなければ分からない(しかもかなり長い期間)」部分が多すぎるのが個人的にはWikiの大きな欠点だと思います。


【Wikiの欠点3:JavaScriptなどのコードを組み込めない】

Wikiはページ内にJavaScriptやCGIなどのプログラムを埋め込めません。
これは技術的な問題と言うよりも、Wikiではコードを埋め込む機能がない(文法が定義されていない)だけの話だと思っているので、あまり詳しくは調べていません。もしかしたらそういうWikiがあるのかもしれません。
もしなくても、近いうちに解消されると勝手に思っていますが。


【まとめ】

さて、いろいろ能書きを書きましたが、筆者が「時期尚早」と判断した最大の理由は、「記事作成効率が悪い」ことです。
試しに、PukiWikiのCGIをサーバーに設置し、30ページほど作成してみたのですが、やはりホームページ作成ソフトでWYSIWYGで編集できることと比べてしまうと効率が悪いです。
特に長い文章の記事を、コードと実際の画面とを行き来していると、編集したかったところがどこだったのか見失ってしまうこともたびたび。
最終的には自分が作成するページは最低でも100ページぐらいにはなる予定のサイトを計画していたので、サイト構築の手間だけを考えると、はっきり言ってHTMLページの方が遙かに楽だと思えました。(そのページを維持管理する手間に関しては、Wikiの方が楽だとは思いますが)
一応、Livedoor WikiはWYSYWYG編集できるので、かなり楽にはなりますが、コメント機能(#comment)や投票機能(#vote)が使えないなどの制約があり今ひとつ。
その他にもいくつか試してみましたが、どれも今ひとつ決定打にかける感じです。
ある程度大規模なサイトを構築/運用しようと思ったら、Wikiの不便さや制約が逆に足かせになりかねない感じがしました。
もちろん、Wikiならではのメリットがあるのも確かなのですが、それと同時に危険性も感じたわけで、それらの不安要素を考慮すると、敢えてWikiで構築するほどのメリットを感じなかったのが正直なところ。
また、Wikiのようなコンテンツ・マネージメント・システム(CMS)はWikiだけではありません。もちろん、今一番デファクトスタンダードの近道にいるのはWikiだと思いますが、Wikiにはまだまだ弱点が多いのも事実なので、他のCMSがつけ込むスキがないわけではありません。そういう意味で、Wikiに拘泥する必要性もあまり感じなかったというのもあります。


もちろん、Wikiは日々改良され、いろいろな改良バージョンが存在します。
また、本来のWikiのアイディアをより発展させて、まとめサイトとして特化した@Wiki(アットウィキ:http://atwiki.jp/)などの変化球もあり、今後もどんどんWikiワールドは広がっていくことでしょう。
それと同時に、Wikiの使い勝手もどんどん改良されていくことを、筆者としても期待しているので、早晩、本号の記述は古くなってしまう可能性大です。(^^;


●関連リンク●

Wikipedia(ウィキペディア)↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/
PukiWiki↓
http://pukiwiki.sourceforge.jp/
Hiki(ヒキ)↓
http://hikiwiki.org/ja/about.html
MediaWiki(メディアウィキ)↓
http://www.mediawiki.org/wiki/MediaWiki
Livedoor Wiki↓
http://wiki.livedoor.com/
アットウィキ↓
http://atwiki.jp/