パソコンとワークステーションの違い
(2007/11/28)
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かつてワークステーション(略してWS)といえば、事実上、Sun MicrosystemsのWS、もしくはSGIのGWS(グラフィックワークステーション)を指していました。
いずれにしても、Intelとは互換性のないCPUを搭載しています(つまりWindowsは動作しない)。ですので、パソコンユーザーにとってはかなり縁遠い世界のコンピュータでした。
現在もSPARCのWSは販売されていますが、現在のWSの主流は完全にIntel/AMD系。つまり、Windowsが動作するコンピューターです。
そういう状況なので、パソコンとワークステーションがかなり似通ってきているのは事実ですが、そもそもの成り立ちが違うので、その歴史の違いが現在でも違いとして残っています。
その最たるものが、OpenGLとDirectXに絡む問題です。


【DirectXはWindows独自規格】
パソコンの世界で3Dグラフィックスと言えば、DirectXが標準です。ところが、DirectXはWindowsの世界でしか通用しない規格です。
一方、WSの世界で3Dグラフィックスの標準と言えば、OpenGLです。
WindowsマシンがWSとして使える(使い物になる)ようなったのは、WindowsでもOpenGLがサポートされたことが大きいです。OpenGLがサポートされることになり、WS用に提供されていたプロ向けのグラフィックソフトが使えるようになったからです。
今では普通にどちらもサポートするのが当たり前の状況になっています。ですが、Windowsの世界においてはあくまでDirectXが標準であり、決してOpenGLがDirectXより優先的な扱いを受けるわけではありません。実際、OpenGLが使えなくても、特別ゲームには支障がない(大抵のゲームはDirectXで動く)ので、OpenGLはあまり重視されませんでした。
ですので「OpenGLをサポートしている」とは言うものの、その互換性(画面の忠実さ)が完全ではないケースも散見されました。
現在は性能も上がり互換性も向上しているので、そういう問題はかなり小さくなっていると言えるでしょう。ですが、Windows上のOpenGLはそういう互換性に苦しんだ歴史があるだけに、ISV認証(互換性を保証する制度)という考え方が重視されます。


【ISV認証とは〜結局これがWSが高価な一因でもあるのだが】
上述のような問題がないことを保証するのが、ISV認証制度です。
例えば、「本ワークステーションは主要ISV認証を取得済み」と言うような言われ方をします。
これはどういう意味かというと、そのワークステーションは、主要なWS向けアプリケーションが正しく動作することが検証済みであることを意味します。
ですが、このISV認証という制度は非常に漠然としています。
「主要なWS向けアプリケーション」が具体的にどんなアプリケーションを意味するのかはメーカー毎/機種毎に違いますし、更に問題なのは、「正しく動作する」というのがどの程度の正しさなのかを第三者が確認できるようにはなっていません。例えば、実際に動作検証作業とはどのような検査項目でどれぐらいの項目数なのか等の情報は一切公開されていません。
このような状態はとても健全な状態とは思えませんが。
なぜならば、ISV認証取得済みのグラフィックカードとそうではないグラフィックカードでは随分値段が違うからです。
例えば、ISV認証を取得している
ELSA Quadro FX3500(ELSA)の実売価格が14万円周辺。
ISV認証を取得していない
EN7900GT/2DHT/256M(ASUSTeK)の実売価格が5万円周辺。
どちらもグラフィックコアはG71という同じ世代のチップなので、基本的な性能は同じです。であるにもかかわらず、ISV認証を取得している(Quadro FX3500を搭載している)グラフィックカードの方が9万円も高いわけです。
なぜこれほどの値段の違いが発生するのかが全く理解不可能。
噂レベルでは、ドライバにOpenGL用のチューニングがされているとか、チップのシェーダーユニットの割り当ての仕方がOpenGL用に最適化されているとかいろいろ言われますが、仮にそれらが本当だったとしても、基本的に同じダイから作られる両者が、これほどの値段の違いになる理由とは思えません。もちろん、ISV認証代も加味しての値段であることは当然ですが、そのISV認証作業の中身が全くつまびらかにされていない状況では、その価格がどの程度正当なものなのかが全く判断できません。
値段が違うのがいけないと言っているわけではなく、なぜそれだけの値段の違いになるのか、という理由をメーカー(チップメーカー/PCメーカー)が十分に説明していないと思います。

当然、このグラフィックカードの値段の違いが、本体価格にも相当影響するわけで、これがワークステーションの価格が高くなる大きな要因になっていると思います。


【結局違いは「価値観」だと思います】
本題とは関係の薄いことを長々と書いてしまった気がしますが、パソコンとワークステーションの住み分けが曖昧になりつつある昨今、違いはこのISV認証に絡んだ問題が大部分だと思うのです。想定されるアプリケーションが違うという問題以前に、「表示画面の確かさ」にどれだけのお金を払えるかという問題です。

ゲームならば、本当は物陰に隠れているはずの敵が透けて見えてしまったり、綺麗なテクスチャが貼られているはずのところが単色で塗りつぶされてしまっていたりといった不具合があっても致命的ではありません。
ですが、CAD/CAM/3D CG作成ソフトで作成される画面でそういうことがあっては仕事に差し支えるわけで。
このような不具合をできる限り回避するためのISV認証であり、結局のところ、このISV認証という制度に対してどれだけお金を払えるかがパソコンとワークステーションの一番の違いだと思うのです。
評価記事/レビュー/購入記/技術解説等、関連記事一覧↓
参考:Workstations/ISVアプリケーション認定製品一覧(日本HP)
用語解説:Quadro(Wikipedia)
用語解説:OpenGL(Wikipedia)