BTXとは何か(PCのフォームファクタ規格)
(2005/11/29→2006/08/21→2007/03/20→07/12→11/17→2010/03/23[逆倒立型ATXでトドメ?])
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最近、デスクトップPCのシャシー(筐体)は、ATXからBTXに移行しつつあります。
しかし、ATXとかBTXというのは、マザーボードの形状/設計に関連した規格であり、性能に直接関係するものではないので、そのメリットが分かりにくいものです。
BTXのメリットを説明するには、マザーボードの統一規格の祖先である、AT仕様から説明しなければなりません。


【AT仕様とは何か】
AT仕様は、現在のWindowsパソコンの起源となった、IBM PC/ATが採用していたフォームファクタを元に作られた規格です。
オリジナルのPC/ATで採用されていたマザーボードの規格を小型化したものなので、正確には「baby AT」ですが、フルサイズATは大きすぎ、現実にも製品がほとんどなかったので、慣習的に「AT仕様」と言われていました。
AT仕様のおかげで、各社共通の規格の元で互換性のあるパーツを製造することにより、コストの削減やパーツの汎用性が向上しました。


【ATX仕様とは何か】
AT仕様が策定されて以来、パソコンはどんどん小型化/軽量化され、AT仕様で定義されているサイズより遙かに小さいPCを作ることも可能になりました。
逆に言うと、AT仕様に従う限り小型PCは作れません。どうしてもAT仕様を逸脱せざるを得ません。
この問題を解決すべく、ATX仕様が登場しました。ATXはATと同程度のサイズの仕様ですが、それよりも小型のMicroATX(と、ずっと後になって登場するさらなる小型仕様のFlexATX)も定義されましたので、小型のPCも規格に沿って製造されるようになって行きました。
ATX仕様はそれ以外にも、AT仕様では各社に判断が任されていた(つまり互換性が不完全だった)部分をより厳密に定義したり、電源の電気的/物理的仕様も当時消費電力が増大しつつあったCPUに併せて強化されたり、ATポートがPS/2ポートに変更されたりと、大幅な改正が行われました。


【BTX仕様とは何か】
ATで規格の統一、ATXで小型化&近代化と進化してきたフォームファクタですが、BTXでは何が進化したのかというと、熱対策です。
昨今のパソコンは非常に多くの熱を発します。CPUはもちろんこと、チップセットも最低限ヒートシンクは必須でしょう。高性能グラフィックカードなどはCPUより高発熱かも知れませんし、メモリの発熱も無視できません。
この、パソコンにとっては大敵の「熱」の問題を解決するために、BTX仕様が登場しました。

それでは、BTXが行っている熱対策は具体的にどのような方法を用いているのかというと、
①なるべく直線的な空気の流れ(エアーフロー)を作り、空気の滞留を最小限に食い止める。
②そのエアーフローの通り道に熱を発するパーツを並べることによって、一本のエアーフローで全パーツから効率的に熱を奪う。
の2点だと思います。

とは言え、このような思想はATXの時代から当たり前の考え方であり、これがBTXになったからといって、実際の冷却効率はさほど大きな違いにはならない気がします。
ところが、拡張スロットに挿したグラフィックカードの冷却については大幅に改善しています。ここがミソ。
ATX仕様では、拡張カードの裏面(チップが露出していない面)が、風の通り道に面してしまいます
※ATX仕様では、熱くなるチップ面(写真ではカード下側)に風が当たりません。これでは効率的なクーリングは望むべきもないことが分かります。
それに対し、BTXはATXの上下をひっくりかえしたような配置になっているため、チップ面が風の通り道に面することになります。
Gateway GT5030jの様子

冷却効率を考えれば至極当たり前な話で、今となってはATXの方がおかしかったと言えます。
ATXが策定された当時に、拡張カードの冷却が(今ほどではないにせよ)考慮されていなかったはずはなく、いかなる理由でこのような方向に決まったのかは知りません。どうやら、ISAカードとの共存をはかるためにあえて逆方向になったっぽいですが、とにかくBTXでやっとまっとうな取り付け方になったと言えるのではないでしょうか。


【BTXのコスト】
さて、問題はコスト。
理屈で言えば、BTXの方が効率的に冷却ができる(少ないファン数で済む)ことから、コスト的に有利なはずですが、BTXの規格がまだ新しいためマザーボードや筐体が高め。
そう言う理由で、現状は比較的高価なパソコンを中心に採用されていますが、ATXとBTXの価格差もだんだん無くなってきており、将来的にはBTXが主流になるのはまず間違いないところでしょう。
2006/08/21
さて、本記事をあげた当初、BTXの割高感がかなり薄まってきており、この調子だと今頃はBTXが当たり前になっていてもおかしくない勢いだったのですが、結局そうなってないですね~。
ましてや自作界では、BTXは相変わらず少数派。
さらに、BTXにとってマズイことが最近起きてしまいました^^;
それはCore 2 Duoの登場。
このCPU、高パフォーマンスな割には非常に低発熱です。はっきり言って、ATXでも十分冷却できてしまいます。PentiumDのような高発熱のCPUを効率よく冷却できるからこそ意味があったBTXの存在意義がなくなってしまう! なんてこった!
まあ、Core 2 Duoにしても、今後クロックが上がっていけばTDPも上がっていくのは当然ですから、あくまで一時的なものかもしれませんが、今後のBTXの未来が不透明になってきてしまったような…。
2007/07/12
結局、BTXは終息に向かっていますorz。
純粋に規格の優劣だけを判断すればBTXは優れていると思います。ですが、BTXの優位性があやふやになってしまったことと、結局ATXとの互換性のなさが足を引っ張り、コストが思ったほど下がらなかったのが原因でしょう。
事実、BTXを売りにしていたGatewayも随分前にATXに戻ってしまいましたし、最後の砦だったDellも、夏モデルでBTXフォームファクターが採用された機種は一つもない状況です。
2007/11/17
DellがBTX筐体のPC、XPS 420を発表しました。
BTX規格はATX規格に返り討ちにあってしまっている状況ですが、完全に駆逐されてしまうというほどではないようすね。
コンシュマー向けのパソコンとなると、ほとんど忘れ去られた規格になりつつありますが、ワークステーション、クライアントPC(法人デスクトップPC)などでは、まだBTX規格のパソコンはそれなりに存在します。
やはり、グラフィックカードを搭載することが前提のワークステーションや、空調的に劣悪な環境に置かれる可能性が高い法人デスクトップPCなどでは、十分にクーリングできないことによる熱暴走などの危険が高くなります。
そういう領域では「保険」のためにBTX、という図式ではないでしょうか。
2010/03/23【逆倒立型ATXでトドメを刺されたか?】
先日判明したことなのですが、HP社のハイエンドPC、e9000シリーズには逆倒立型ATX筐体が採用されています。
逆倒立型ATX筐体に関しては、存在自体は知っていました。ATXの規格を変えずにBTXの良いところを享受できる非常に面白いアイディアだとは思っていましたが、基本的にマニアックな自作ユーザー向けのキワモノ筐体という認識でいました。ところが、既にメーカー品に使われていたことを知ってちょっと驚き。
これを見ると逆倒立型ATXは完全に市民権を得たと言えるでしょう。こうなってしまうと、BTXのメリットが完全に消失してしまうわけで…。この状況を考えると、BTXは役割を終えたと言ってしまって構わないのではないかと。
逆倒立ATX vs 通常ATXの比較

上図を見ていただければ分かるとおり、逆倒立型は、通常のATXマザーをひっくり返して逆側面に取り付けられます。ですので、拡張スロットの位置はそれに従って筐体の真ん中あたりに迫り上がってくる寸法になります。そしてもちろん、マザーボードがひっくり返っているので拡張スロットが上を向くようになり、BTXと同等のグラフィックカードの冷却効率を実現できるという理屈です。
電源ユニットの位置はどちらも変わらないですね。(電源/マザーボード間はケーブルで接続されているだけなので特別影響しない)
■関連記事■
資料:BTXレイアウトの空気の流れイメージ(Gatewayのサイト)
用語:AT仕様
用語:ATX仕様
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用語:フォームファクタ

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